年収が低いといわれる介護業界の中でも、比較的年収が高いといわれている施設が介護老人保健施設(老健)です。
そのため、転職を検討する人も多いですが、実際の仕事内容やブラックな側面を知っていますか?
現場で働くリアルな声からわかった、老健のリアルな現状をお伝えします。
目次でわかる老健
介護業界は年収が低いイメージがありますが、全ての施設で低いわけではありません。例えば、介護度の高い利用者が多かったり、夜勤がある施設ではそれなりに収入も高くなります。
老健もそのひとつで、老健で働く介護職員の平均月収は約30万円前後です。この平均は、介護施設全体の平均月収役24万円を大きく上回っています。
老健では医療サービスがメイン。ほかの施設では、食事・入浴・排泄などの介護や健康管理が介護職員には求められ、日常的に必要なサービスを提供することに重点が置かれています。
リハビリや機能訓練など、医療的サービスが中心となることで、特養や老人ホームと比べて身体介助やレクに1日追われることはありません。
基本的には数ヵ月単位での利用となり、その都度審査があるため、生活指導員として事務や調整の仕事が多くなります。そのため、経験を積んでケアマネを目指している人にはおすすめの施設が老健です。
私が勤務している老健は、特に人員をギリギリで回している施設ではなく、比較的人員に余裕がある施設です。
それでも、毎日数時間の残業は当たり前だし、休日出勤をして仕事をすることもあります。
日中は機能訓練が中心となるので、比較的自由に時間が使えるかと思いきや、若い人の離職が多過ぎていまだにレクの準備や利用者の介助でせかせかしています。
看護師やPTなど専門職はほぼ残業をしないで定時にささっと帰りますし、それ以外の雑務は全て介護士がやっています。
あり得ないのが、ケアプランに対しての評価やアセスメントをそのまま放置する専門職が多すぎる!カルテに挟んで終わりとか、事務の一連の流れが統一できていないせいで、監査前のカルテチェックで泊まり込んだことがあります。
さらにあり得ないのが、これがほぼサービス残業だってこと。タイムカードはパソコン管理で全て一定の退社時間にセットしています。1ヵ月の残業のうち、半分以上はサービス残業って結構痛いですよね…。
老健の平均月収は介護施設の中ではやや高めなところが多く、平均して30万円前後になります。そこに夜勤手当やその他資格によって手当が加算されます。
介護業界では珍しく、アニバーサリー休暇など珍しい休暇制度を採用していたり、休暇施設を保有している場合もあり、福利厚生が充実している老健も多いです。
ただ、福利厚生が充実していたり収入が高いのは一種の客寄せのようなもの。注意が必要です!
「給料分の仕事しかしたくない」というタイプの人が正社員として働くには、オススメできません。
今まで特養で勤務をしてきましたが、看取りが介護があることが辛く何度か転職を繰り返しています。
老健は看取り介護で終わりを迎える施設とは違い、自宅での生活を目指して介護が行われます。終わりではなく、始まりの支援と行ったイメージを抱いて転職したのが大間違いでした。
介護をしていて、医療的判断が必要であったり、プランの見直しを介護職のほうから提案しても、私たちの施設では医療職が強い権力を持っていて、ほとんど口出しすることはできません。
むしろ、介護職を小馬鹿にしているような対応をされて、「こちらの判断だから」とか「介護士に何がわかる?」と言われたこともあります。
医師は横柄な態度でほとんど取りあってくれないので、看護師を頼ると、看護師も基本的には同じような対応をされるので、医療側と介護側で完全に対立関係にあり仕事がしづらいです。
老健でも、施設によってはお互いを尊重しあって、それぞれの役目に責任を持って勤務している施設はやはり自宅復帰率も高いと聞きます。判断を早まったなーと感じる日々です。
利用者のほとんどは病院からの入居となり、必要になる介助が多い傾向があります。
しっかりと医療的支援が行われる施設が多いですが、中にはほとんど機能していない施設があるのも現状で、入居者のADL(日常生活動作)はどんどん下降していくのです。
数ヵ月単位での入居を審査する決まりはありますが、実際は在宅復帰が可能になるレベルへ持っていくのは困難、もしくは家族の反対や本人の希望もあり、長期利用となるケースが多いのが現状です。
◎トライアル雇用とブラック老健の関連とは?
雇用契約を3ヵ月間とし、契約が終了したときに改めて正社員として採用するという制度です。 契約が終わったときに必ずしも正社員として採用するという義務は会社側になく、メリットとデメリットがはっきりしている雇用方法です。
施設側(雇用主) | 雇われ側 | |
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メリット | ・国から補助金が支給される ・試用期間として試してから雇える |
・就労体験の一環として勤務できる(実際に働きながら職場環境、仕事内容を見極めることができる) |
デメリット | ・トライアル終了後の契約更新の是非を決めることができる | ・トライアル終了後に契約終了もありえる |
助成が出るトライアル雇用は施設側にも利点が多い!しかし、ブラック老健の多くはトライアル雇用を実施していることが多い傾向があります。
施設側は報告書の提出は義務づけられているものの、トライアル期間の内容は報告義務がありません。
介護施設では、トライアル期間とはいえ通常の業務を課す場合が多く、重労働・夜勤・高度な身体介助などを求めることも多く、こき使った後の契約終了も多いにありえるのです。
老健は他の施設とは違い、医療スタッフとの連携を高める必要があります。他の施設では必要ないような医療に関する専門知識や、視野を広く持つこと、高いコミュニケーション能力を身につけることが大切です。
仕事面だけでなく、違う職種が交わる現場では人間関係も複雑化する可能性があり、多方面から見て老健勤務はサバイバルです!
生き残りをかけた老健での戦いを制すれば、介護業界ではどこの施設でも通用する精神力・介護全般の知識を取得することができます。